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03.15.14:43 [PR] |
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03.01.15:44 Doubt…1 |
ひと掬いの暗闇が指先から漏れ落ちてきて
ぼくの世界を真黒く染めたのです。
でもそれは只々暗闇で、新月の夜のように魅力的な漆黒でした。
そのなかでキラリキラリと星のように瞬いていた光は
まぎれもなく、あなただったのだと思います。
●Doubt…1
『あなたはそのうち、死ぬ』
なんてこというんだ、あいつは。
通り過ぎざま、客のいない占い師に頼んでもいないのに将来を見られた。
(そもそも、そのうち、っていつだ。)
それが客引きの言葉なのはわかってはいたが、気持ちは釈然としない。
(今日は厄日だ)
朝の情報番組で、いて座は11位だった。
ラッキーアイテムは「納豆的な食べ物」と言われていた12位のおうし座と、
どっちが不幸なんだろう。
俺なんてラッキーアイテムさえ教えてもらえなかった。
納豆的な食べ物って、納豆でもいいのかな
と、おうし座にあやかって納豆を食べてみたけど、なんの効果もなかった。
バイトして3か月たった牛丼屋を突然首になった。無遅刻無欠勤の俺なのに。
店長はしどろもどろに理由をいろいろ言ってたけど、結局あれだ、社員をひとり入れなきゃいけないから玉突き事故的に首になったわけ。
さらに、同じ学部で思いを寄せていたノリコちゃんには、付き合って2年になる彼氏がいることが判明。
飲み会での「ほんと優しいよねー。」とか「ノリコそういう男の子と付き合いたいな♡」とか
あの思わせぶりな発言はなんだったんだ―――っ!!!
少なくとも俺は本気だったさ…。みんなから「ノリコはやめなよ…」って遠回しに言われた理由がこれかい。
さらにさらに、朝の納豆にあたったのかは知らないが
必修の試験をまさかの腹痛で受けられない始末。
90分間俺はトイレと仲がよかった。
お陰様で今はすっかり体調がいいが、これで追試を受ける羽目になる。
ってゆうか、追試すら受けさせてもらえそうにないこわい教授だったなぁ…。
といった一日。それに占い師の発言で俺、撃沈。
暮れなずむ街
暮れまくった俺。
とぼとぼと歩いた。
日本有数の繁華街を横切ると俺の暮らすマンションがある。
駅まで徒歩5分というナイスなリッチなのに家賃は5万5千円(共益費込)で1DK。
見つけた時は「なんて当たり物件なんだろう。俺ってラッキーボーイ!」なんて思ったけど
入ってびっくり、前と左右が♡ラブホテル♡。ええ、下見にいかなかった俺が悪いよ…。
まぁでも住んで4年もすりゃ、大分慣れたけどね。
そんな家路の帰り道。朝は気付かなかったが、いつも通る道で道路工事が始まっていて道が混んでいる。
疲れ切っていた俺は、果敢にチャレンジする気持ちも失せて隣の小道に入った。
この辺はよく通る道だが、帰り道で通ったことはあまりないな。
平屋建ての飲み屋が所せましと軒を連ね、盆提灯に明かりがともり始めると
通り全体が橙に染まりあがり、何とも言えないノスタルジックな風景となる。
そこを一丁ほど歩くとY字に道路がわかれ、右に折れると家路の道となる。
いつものように右に曲がろうとすると、左の道に小さな黒地に白抜きの看板が目に留まった。
ダウト…?
(こんな店、あったかな)
バーか…。
時計に目をやると、19時57分。
19時からバイトの予定が、17日分の給料を手渡されてそのまま帰ってきた。
86,700円
(いいや、今日は飲んで帰ろう…)
いやな気分だし、そのままうちに帰る気が起らなかった俺は
Y字の道を左に折れた。
俺が店の前につくと、カチカチリとちょうど看板に電気がともった。
(20時オープンなのか…)
コンクリートが打ちっぱなしの構造が、この街には似合わない。
道路から2段ほど階段を下りると、「push」と書かれたドアがあった。
やや重たいドアを開けると、重たいベルの音が響き
ツンと香ばしいコーヒーのにおいがした。
「いらっしゃいませ。」
薄暗がりのカウンターから、落ち着いた声が聞こえた。
************************************
Doubt
名詞…疑い、疑問、疑念、疑義、疑惑、懐疑、不審、二の足
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ぼくの世界を真黒く染めたのです。
でもそれは只々暗闇で、新月の夜のように魅力的な漆黒でした。
そのなかでキラリキラリと星のように瞬いていた光は
まぎれもなく、あなただったのだと思います。
●Doubt…1
『あなたはそのうち、死ぬ』
なんてこというんだ、あいつは。
通り過ぎざま、客のいない占い師に頼んでもいないのに将来を見られた。
(そもそも、そのうち、っていつだ。)
それが客引きの言葉なのはわかってはいたが、気持ちは釈然としない。
(今日は厄日だ)
朝の情報番組で、いて座は11位だった。
ラッキーアイテムは「納豆的な食べ物」と言われていた12位のおうし座と、
どっちが不幸なんだろう。
俺なんてラッキーアイテムさえ教えてもらえなかった。
納豆的な食べ物って、納豆でもいいのかな
と、おうし座にあやかって納豆を食べてみたけど、なんの効果もなかった。
バイトして3か月たった牛丼屋を突然首になった。無遅刻無欠勤の俺なのに。
店長はしどろもどろに理由をいろいろ言ってたけど、結局あれだ、社員をひとり入れなきゃいけないから玉突き事故的に首になったわけ。
さらに、同じ学部で思いを寄せていたノリコちゃんには、付き合って2年になる彼氏がいることが判明。
飲み会での「ほんと優しいよねー。」とか「ノリコそういう男の子と付き合いたいな♡」とか
あの思わせぶりな発言はなんだったんだ―――っ!!!
少なくとも俺は本気だったさ…。みんなから「ノリコはやめなよ…」って遠回しに言われた理由がこれかい。
さらにさらに、朝の納豆にあたったのかは知らないが
必修の試験をまさかの腹痛で受けられない始末。
90分間俺はトイレと仲がよかった。
お陰様で今はすっかり体調がいいが、これで追試を受ける羽目になる。
ってゆうか、追試すら受けさせてもらえそうにないこわい教授だったなぁ…。
といった一日。それに占い師の発言で俺、撃沈。
暮れなずむ街
暮れまくった俺。
とぼとぼと歩いた。
日本有数の繁華街を横切ると俺の暮らすマンションがある。
駅まで徒歩5分というナイスなリッチなのに家賃は5万5千円(共益費込)で1DK。
見つけた時は「なんて当たり物件なんだろう。俺ってラッキーボーイ!」なんて思ったけど
入ってびっくり、前と左右が♡ラブホテル♡。ええ、下見にいかなかった俺が悪いよ…。
まぁでも住んで4年もすりゃ、大分慣れたけどね。
そんな家路の帰り道。朝は気付かなかったが、いつも通る道で道路工事が始まっていて道が混んでいる。
疲れ切っていた俺は、果敢にチャレンジする気持ちも失せて隣の小道に入った。
この辺はよく通る道だが、帰り道で通ったことはあまりないな。
平屋建ての飲み屋が所せましと軒を連ね、盆提灯に明かりがともり始めると
通り全体が橙に染まりあがり、何とも言えないノスタルジックな風景となる。
そこを一丁ほど歩くとY字に道路がわかれ、右に折れると家路の道となる。
いつものように右に曲がろうとすると、左の道に小さな黒地に白抜きの看板が目に留まった。
bar Doubt |
ダウト…?
(こんな店、あったかな)
バーか…。
時計に目をやると、19時57分。
19時からバイトの予定が、17日分の給料を手渡されてそのまま帰ってきた。
86,700円
(いいや、今日は飲んで帰ろう…)
いやな気分だし、そのままうちに帰る気が起らなかった俺は
Y字の道を左に折れた。
俺が店の前につくと、カチカチリとちょうど看板に電気がともった。
(20時オープンなのか…)
コンクリートが打ちっぱなしの構造が、この街には似合わない。
道路から2段ほど階段を下りると、「push」と書かれたドアがあった。
やや重たいドアを開けると、重たいベルの音が響き
ツンと香ばしいコーヒーのにおいがした。
「いらっしゃいませ。」
薄暗がりのカウンターから、落ち着いた声が聞こえた。
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Doubt
名詞…疑い、疑問、疑念、疑義、疑惑、懐疑、不審、二の足
動詞…疑う、怪しむ、訝しむ